のこころ

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ホスピスの順番を待つということ -申し込みから受け入れまで-

母のためにホスピスの申し込みをしました。

ホスピスとは緩和ケアを専門に行う施設です。もう積極的な治療をしておらず、痛みを極力取り除き、楽に生活できる状態を維持するためのサポートをしてくれるのが緩和ケアです。

つまり、病気はもう治らないので治療のための病院ではなく、残りの時間をなるべく快適に過ごしてもらえる病院へ転院するのです。

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ホスピスの申し込み

ホスピスへの申し込みは入院しているのであれば、病院のソーシャルワーカーさんに相談すると施設の選定から申し込みまでをサポートしてもらうことができます。私のホスピスへの申し込み手順はこのような流れになっていました。

ホスピスの選定

住んでいる地域から通える範囲のホスピスをワーカーさんに探してもらったのですが、ホスピスがどの地域にも沢山あるわけではありません。自宅からの距離と経済的な状況から絞り込んでいくと、どの施設にするのかはすぐに決まりました。

決まったら病院からホスピスに申し込みをしてもらいます。

ホスピスの外来受診

ワーカーさんに調整してもらった日時に、病院から渡された治療明細書レントゲンなどの画像データの入ったCD−Rを持って、家族がホスピスの外来を受診します。

本人が受診する場合があるのかどうかわかりませんが、母は入院していて外に出歩ける状態ではなかったので、家族である私が病院に出向いてホスピスの医師からの質問に答えて、母の状況を説明します。

ホスピスに入院できる条件

外来の診察でまず医師がしたのは、入院できる条件に当てはまっているのかを確認するための質問でした。入院できる条件とは次の3つです。

  1. 積極的な治療をしていない
  2. 本人がホスピスへの入院を希望している
  3. 余命が3ヶ月以内である

母の病気は大腸がんです。病気が発覚してからこれまでの経緯は、現在入院している病院の医師に書いてもらった治療明細書に記載してありますが、確認のためにも順を追って説明しました。

1.積極的な治療をしていない

ホスピスは病気を治すための施設ではないので、まずはもう積極的な治療をしていないことの説明と、こうなった経緯、そして現在病院で受けている緩和ケアの内容についてお話ししました。

転移があること、抗がん剤治療を行っていたがすでにやめていること、入院先では痛みを抑えるために処置をしてもらっていることを伝えます。

2.本人がホスピスへの入院を希望している

これは患者本人に病気の状況が告知されているか、そしてホスピスという施設について本人がきちんと認識しているのかを確認されます。

何も知らされずに入院してきた患者さんとトラブルになってしまってはいけませんので、家族だけが希望していてもホスピスには受け入れてもらえません。

母は病名も、今の状況も告知しています。ホスピスでも病院でも、入院させてくれるところならどこでも大丈夫だと言っています。

3.余命が3ヶ月以内である

ホスピスによっては余命半年以内なら申し込みが可能な場合もあるそうですが、私の受診した施設では3ヶ月以内であることが条件でした。それは入院できる期間が3ヶ月なので、3ヶ月以上生存していた場合に一度退院してもらったりしなければならないのを避けるためだと説明されました。

現在の病院から言われた余命の目安を伝えましたが、余命の判断は実に難しいそうで、医師の経験や見立て方によって差が出てしまう、カンのようなものだと言います。

そこで、計算方法はいくつかあるそうですが、こちらのホスピスは血液検査の数値と、いくつかの質問の答えから数値化して状態を判断するのだそうです。

血液検査の数値をいくつか入力して算出された値は「24」だと言われました。正常な数値を知らないので最初は全くわかりませんでしたが、聞くと正常な数値は「40前後」で、低いほど悪いそうです。先生の判断はかなり悪い状態だと。

そして質問された内容で覚えているものは、この7つです。

  • 歩行はできるか
  • 食事はできるか
  • 息苦しさはあるか
  • むくみはあるか
  • 酸素の処置をしているか
  • 麻痺はあるか
  • 幻覚はあるか

母の様子を思い出しながら、状況を伝えましたが、歩行も食事もできているし、先生の言っているような症状は出ていませんでした。もしかしたらまだ受け付けはできないかもしれないと思ったのですが、先生の総合的な判断で申し込みを受け付けてもらえました。

受付完了。そして順番待ち

受け付けがされたら、すぐに転院の段取りに進んでいくわけではありません。ホスピスは数の少なさと希望者が多いことから、いつも待機者が出ているのです。

10名の患者さんが待たれていると言います。期間の目安は半月から1ヶ月程度で、受け付けた順番通りではなく状態の悪い方から順に受け入れているそうです。

ベッドが空くということは、どなたかが退院されたか亡くなられたという事になります。余命の判断を最初にしっかりされていることから、退院される方が多くないのは明らかです。この順番を待つということは、つまり母の死の順番を待つことなのかと考えてしまって、いてもたってもいられなくなりました。

受け入れが可能になったらホスピスから連絡がもらえるのですが、連絡をもらった翌日の午前10時には転院というスケジュールだそうです。

入院の際の持ち物や、ホスピスを案内してもらいながら説明を受けて、外来の受診が終了しました。かかった時間は約1時間ほどでした。

母の状態が急変

申し込みを終えて、母に病院の様子や先生との話を報告し、半月くらいしたらホスピスに転院だと伝えたのが金曜日のことでした。

翌週の月曜日には食欲が落ち、火曜日にはよく眠っているようになり、水曜日には酸素が必要になり、木曜日には少し幻覚が見えるようになりました。先生から余命判断の時にされた質問にどんどん当てはまるようになってきたのです。

あまりに急激な状態の変化に慌ててホスピスに連絡を入れて、状況が変わったことを伝えました。今の順番を聞くと6番目だそうです。どれだけ状況を説明してもこの順番は変わらないと言います。と言うことは、皆同じ状況だということです。

ホスピスのある病院の一般病棟に先に転院しておいて、空きが出たらフロアを移動するだけにもできると聞いて、今できる精一杯のことをして、母に快適な場所で過ごしてもらいたいと動きまわっていました。

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ホスピスへの転院

「418番空いたってね」

病院に行くと母に言われたので、ホスピス転院先の病室が決まったのかと思い、看護師さんに確認したのですが、まだ転院が決まったわけではありませんでした。

その後も「天気がいいと、髪が茶色く見えるねぇ」なんて、他愛のない会話をしていたのですが、突然「ごめんねぇ。いろいろと」と言う母。何にも謝ることなんてないのに…。

ホスピスから転院の受け入れ準備ができたと連絡が入ったのはその日の夕方でした。病院と連絡を取り、介護タクシーを手配して、病室の荷物を移動させる準備をしました。

酸素をつけている場合は医師が介護タクシーに一緒に付き添ってホスピスまで行ってくれるそうです。

順番がきた

転院するはずだったその日に母は亡くなりました。ホスピスに申し込んだ日からちょうど半月後でした。

ホスピスの順番待ちは辛いです。

母は病院ならどこでもいいと言っていました。でも家族は何かできることをしたいと思うのです。

 

「418番空いたってね」

三途の川を渡る人もたくさんいるから、番号札を渡されて順番を待つのでしょうか。母の番号が418番だったのかな。